郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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今年の話題 ヒットランキング
選挙相次ぎ、クマ出没最多
米価高騰、いろは蔵オープン

 庄内で今年起きた重要な出来事などをまとめた。1月の県知事選挙に始まり、参議院議員選挙、庄内町長選挙、鶴岡市長・市議会議員選挙、酒田市議会議員選挙と選挙が相次いだ。全国的に問題化したクマの出没は、酒田、鶴岡両市でも過去最多となった。米は米どころ庄内でも高騰した。松くい虫は被害が急拡大して深刻な状況。洋上と陸上で進む風力発電事業には、住民などから不安視する意見が出た。大型商業施設いろは蔵パークが開業し、外航クルーズ船の酒田港寄港は過去最多の9回になった。デフリンピックでの活躍もあった。(本紙取材班)

 選 挙   鶴岡市長選は新人勝利

 1月の県知事選と、酒田市・飽海郡区の県議補選を皮切りに、7月の参院選、庄内町長選、10月の鶴岡市長・市議選、酒田市議選が行われた。
 前回選(2021年1月)に続き選挙戦となった1月26日投開票の県知事選では、現職の吉村美栄子氏が新人で自営業の金山屯氏を破り、5選を果たした。
 前回選で対立した自民党県連は独自候補の擁立を断念し、吉村氏の要請に応じて支援に回った。自民、立憲民主、国民民主、共産各党の県内組織が相乗りで吉村氏を支援したため、同氏の得票数に注目が集まった。
 吉村氏は31万8364票(得票率94・71%)を獲得し、金山氏の1万7794票(同5・29%)に30万570票の大差をつけた。
 大きな政策論争が無かったことから、投票率は39・67%と前回選の62・94%を23・27ポイント下回り、過去最低だった01年の48・81%にも届かなかった。
 7月20日に投開票された第27回参議院議員選挙の山形県選挙区(改選数1)では、無所属現職の芳賀道也氏=国民民主党推薦=が、自民党新人の大内理加氏=公明党推薦=との事実上の一騎打ちに圧勝し、再選を果たした。参院選の県選挙区で野党系候補が勝利を収めたのは16年7月から4回連続となった。
 参政党新人の佐藤友昭氏は得票数を伸ばしたが浸透し切れず、共産党新人の三井寺修氏は同党以外への広がりを欠き、政治団体・NHK党新人の大貫学氏は埋没した。投票率は62・55%で前回参院選(22年7月)の61・87%を0・68ポイント上回った。
芳賀氏は24万8864票(得票率46・81%)を獲得し、大内氏の19万4478票(同36・58%)に5万4386票の差をつけた。
 10月5日に投開票された鶴岡市長選挙では、新人で元県議の佐藤聡氏が、3選目を目指した現職の皆川治氏と新人で会社経営者の喜多恒介氏を破り初当選した。

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佐藤聡鶴岡市長が誕生(10月5日)

 佐藤氏は前回市長選で皆川氏に120票差で敗れていたが、今回は3万4158票を獲得し、皆川氏の2万3641票に1万517票の差を付けた。喜多氏の得票数は6580票だった。  同日に投開票が行われた鶴岡市議会議員選挙には、現職20人と新人19人が立候補し、現職16人と新人12人が当選した。  3週間後の10月26日に投開票された酒田市議会議員選挙は、定数25に対し現職20人、前職1人、新人7人の計28人が立候補し、現職20人全員と前職1人、新人4人が当選した。
 少数激戦の様相を呈する中、市民の関心は低調のまま推移し、投票率は47・81%と、市町村合併前の旧市時代を含め過去最低だった13年11月の54・36%を6・55ポイント下回った。現職と前職は、当選した21人全員が前回選(21年10月)の得票数を下回った。

 ク マ   市街地にも続出

 クマの目撃(痕跡含む)件数が、鶴岡、酒田両市で過去最多となった。

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クマが酒田市の住宅街の寺に居すわる

 11月末時点の目撃件数は、鶴岡市が446件で24年度の66件より380件増えた。過去最多だった23年度の159件も上回った。酒田市は417件で24年度の53件より364件増で、過去最多だった23年度の202件も上回った。
 山の餌不足が要因。中山間地だけでなく市街地での目撃も相次いだ。両市では現場職員の判断で銃を使用する緊急銃猟を実施。市民は戸締まりの強化や屋外行事の中止、子どもの送迎などの対応に追われた。

 米価高騰   概算金増え価格高止まり

 2024年から続く米不足と米価格の高騰は、25年産米が出回っても解消せず、高止まりが続いている。
 米どころ庄内でもスーパーの売り場に米が無かったり、「1家庭1袋」などの購入制限がかけられたりした。政府備蓄米の販売に行列もできていた。
 農林水産省がPOSデータ(全国約千店舗のスーパーから購入したデータ)に基づき作成した、スーパーでの米の販売価格の推移によると、12月1日の週の全国平均価格は5キロ4321円で、前の週から14円低下したが、24年12月2日の週の3469円を852円24・6%上回った。23年同期は2千円程度だったことに比べると2倍となっている。
 全農山形県本部が示した25年産米の概算金(1等米60キロ)は「つや姫」が3万1千円、「雪若丸」が2万8600円、「はえぬき」が2万8千円と、3銘柄とも24年産米を1万1500円上回った。
 全国的に米の集荷競争が激しくなっていることや、肥料や燃料費などが上がって米の生産コストが高くなっている状況があり、生産者の手取りを向上させて、営農を続けていける収入を確保する必要から上げた。
 ある農協では、24年あたりから新たな米の集荷業者が入ってきて、高値で米を集める例が見られた。25年産米の収量は前年より多かったが、当初計画した集荷予定量まで届かなかった。生産者が親類などに分ける分として確保している量も増えている、とみている。

 松くい虫   被害量が急拡大し過去最大

 先人が植栽し飛砂から庄内平野を守ってきた庄内海岸林で、松くい虫の被害が急拡大している。
 今年度の庄内海岸林松くい虫被害対策強化プロジェクト会議では、25年の被害状況は、ドローンの撮影写真で見る限り、過去最も多かった24年をさらに上回るとの予測が示された。
 県庄内総合支庁森林整備課では「地域によって違いがあるものの、昨年まで松枯れがぽつぽつと点在していた地域でも、今年は一面赤くなっている」などと説明した。
 これまでの防除中心の対応ではすでに限界を超え、守るべきクロマツは薬剤注入や薬剤散布で守りながら、抵抗性クロマツや広葉樹林を植えて、海岸林の再生を図る方向に転換する。
 鈴木憲和農林水産大臣(衆院県2区)が12月13日、酒田市浜中で松枯れを視察し、関係者と意見交換した。

 風力発電事業   住民らの不安疑念あらわ

 遊佐町沖洋上風力発電の発電事業者に選定された「山形遊佐洋上風力合同会社」(東京都)主催の住民説明会が3月22日に同町で初めて開かれ、洋上風車までの離岸距離や低周波音による健康被害、海底湧水への影響を懸念する声、冬場の事故対応、地震津波対策などで疑問や要望が相次いだ。
 合同会社は、総合商社の丸紅(株)(東京都)、総合建設業の(株)丸高(酒田市)、関西電力(株)(大阪市)、国際エネルギー企業BP(英・ロンドン)100%子会社のBPIOTA、東京瓦斯(株)(東京都)の計5社で設立した事業会社。経済産業、国土交通の両省から24年12月24日、同町沖の発電事業者に選定された。
 説明会は、事業化想定海域で4月から海底地盤調査を始めることから、地域住民に事業への理解を深めてもらうおうと開いた。山形県と遊佐町も共催した。
 合同会社は7月1〜10日に、町内6地区で地区別住民説明会も開いたが、8月下旬に三菱商事(株)が秋田県能代市・三種町・男鹿市沖と同県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖の3海域で計画していた洋上風力発電事業からの撤退を表明した。
 10月23日に町内で開かれた山形県地域協調型洋上風力発電研究・検討会議「遊佐沿岸域検討部会」の本年度初会合では、三菱商事の撤退を踏まえ委員から同町沖での事業推進に懸念を示す声や、洋上風車建設に伴う漁業や環境への影響を不安視する意見が上がった。
 11月17日の「山形県遊佐町沖における協議会」(法定協議会)の第5回会合では、初めて参加した合同会社側が、地域共生策や同協議会でまとめた留意事項への対応方針などを説明した。
 これに対し漁業関係者からは漁業影響調査や地域振興策に関して国や県、選定事業者による準備や対応が遅れていることなどへの不満や疑問の声が相次いだ。
 一方、洋上風力発電の事業化に向けた3段階ある手続きのうち、2段階目の「有望な区域」に国が選定した酒田市沖に関し、健康影響や災害時の安全性などについて学ぶ住民学習会が6月29日に同市内で開かれた。
 講師の専門家から低周波音が健康に影響を及ぼす可能性は低く、洋上風車が建つ沖合での津波荷重は波浪荷重より小さいなどとする見解が報告された。
 これに対し参加した住民からは「説明は明らかにミスリードで適切ではない」「偏った話だけを聞いただけでは、市民は正しい判断を下せない」などといった批判や反論が続出した。

矢引は地元自治会が反対

 エネオスリニューアブル・エナジー(株)(東京都港区)が、鶴岡市矢引などで計画している「三瀬矢引風力発電事業」(仮称)に対し、地元の矢引自治会(長谷川伸恒会長、29世帯)は7月27日に臨時総会を矢引公民館で開き、反対を決議した。賛成か反対かを全世帯に聞いた結果、反対19、賛成4、未定6で反対多数となった。
 反対理由は▼風車から矢引地区の民家までは約1・1キロしかなく、高さ172メートルもの風車は大きすぎる▼圧迫感を受ける景観となる▼騒音と低周波音の影響による健康への懸念▼2022年に土砂災害が起きた西目地区と同じ地質のため、土砂災害が不安▼動植物への影響が大きい―など。

 商業施設   いろは蔵パークが開業

 酒田商業高校跡地に今年春、大型商業施設いろは蔵パークが開業した。

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いろは蔵パークA館が3月27日開業

 鉄骨造り平屋建てのA館には、山居倉庫から移転した酒田観光物産館酒田夢の倶楽、無印良品酒田、カルディコーヒーファーム、JINS、カイエイ薬局、イカ恋食堂ごはん亭の6店が入る。鉄骨造り平屋建てのB館にはト一屋いろは蔵パーク店、キッチンスタジオiGotが入る。駐車台数は車304台、自転車40台、バイク12台を確保した。

 外航クルーズ船   過去最多9回寄港

 酒田港への外航クルーズ船の寄港が4~10月に7回、26年3月に2回予定され、25年度の寄港は過去最高の9回となる。このうち初寄港が6隻あり、乗客定員千人未満のラグジュアリー(高級)客船も寄港した。

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セブンシーズが10月23日に寄港

 酒田市の観光施設や飲食店を中心に外国人客でにぎわい、高校生が英語ガイドを務めて実戦学習の場にしたり、小学生が国際交流を体験したり、経済効果だけではない波及効果を生み出していた。
 魅力は港から酒田市街地が近く、市街地の観光地がコンパクトにまとまっているため周遊しやすいこと。酒田舞娘や山王くらぶなど日本らしい観光素材があり、小さな日本を感じられること。岸壁での歓迎・見送りや街なかの市民の対応が親切と、おもてなしも高く評価されている。
 26年度は20回の寄港が予定されている。

 スポーツ   デフリンピックで活躍

 聴覚に障害がある人のオリンピック、東京2025デフリンピックが11月15~26日に日本で初開催され、庄内の4選手が日本代表として出場し活躍した。
 鶴岡市出身の小鷹実春選手(26)=ミツウロコグリ―ンエネルギー(株)=は、バスケットボール女子初の金メダルに貢献した。強豪アメリカと対戦した決勝では、チーム最多得点の24点を挙げ、65対64で勝利した。
 齋藤心温選手(24)=ホヤテクノサージカル(株)=は、サッカー男子で銀メダルを獲得した。全試合に守備の要センターバッグとして出場。トルコとの決勝戦ではロングパスで同点弾をアシストしたが惜しくも1対2で敗れた。
 齋藤京香選手(24)=CPAエクセレントパートナーズ(株)=は、水泳女子400メートルメドレーリレーで第3泳者バタフライを泳ぎ、激しい2位争いを展開してアンカーにつないだ。銅メダルで2大会連続でメダルを獲得した。
 齋藤丞選手(23)=東北エプソン(株)=は、決勝進出を果たし、陸上男子1500メートルで11位、男子5000メートルで10位となった。

表
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