郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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全文掲載

本紙単独インタビュー
持続可能な財政運営に注力
進藤晃酒田市議会議長が抱負語る

 酒田市議会の新議長に11月18日付で就任した進藤晃氏(66)=同市東泉町2丁目=は本紙の単独インタビューに応じ、「最大の政策課題は人口減少対策だが、喫緊の課題も山積している。さまざまな施策を打ち出していくためにも、持続可能な財政運営の実現に注力していきたい」との考えを示した。自身が設置した議会改革推進特別委員会では「報酬を含めた形で、議員定数に関する調査研究を進めてもらうことにしている」と述べた。吉村美栄子県知事が前向きな見解を示す山形新幹線の庄内延伸に向けては、行政と歩調を合わせて、推進運動を盛り上げていく方針も明らかにした。(編集主幹・菅原宏之)

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インタビューに答える進藤晃議長(66)

最大の課題は人口減少対策

―酒田市の現状をどのように認識しているか。それを踏まえ、議長任期中の2年間で注力していくことは。
 人口減少が顕著になり、それを踏まえた形で各種の政策が展開されている。そうした現状から中長期的に見れば、最大の政策課題は人口減少対策になる。
 しかしながら、庄内海岸林の松くい虫被害やクマ被害への対応、空き家対策、バスによる広域的な相互乗り入れを視野に入れた地域公共交通網の整備など、喫緊の課題も山積している。
 こうした課題に対応し、さまざまな施策を打ち出していくことが求められているが、現在の市の財政状況は逼迫し、十分な予算を確保していけるのかが不透明になっていると見ている。
 議長任期中の2年間では、人口減少対策にはもちろん取り組んでいくつもりだが、財政の健全化に向け、持続可能な財政運営の実現に力を尽くしていかなければならない、と考えている。

公共施設の適正化を推進

―歳出削減と歳入確保などを含め、財政の健全化に向けては、具体的にどんなことを進めていくつもりか。
 歳出面では、行政サービスとして削ることのできない部分は維持する一方、公共施設の適正化を進めてスリム化を図っていかなければならないと思っている。
 例えば、市町村合併後に設けてきた八幡、平田、松山の3総合支所は、機能の縮小などを検討する段階にきている。なかまち健康プラザも、当初の目的を達成したと考える。行政が民間企業で手掛けている事業を担うことはあっていいのかもしれないが、民間に任せるところは任せるべき。
 ただ3総合支所と、なかまち健康プラザは、ともに廃止することが前提ではなく、これから検討が必要ではないのか、ということだ。
 第四中学校区で計画されている義務教育学校の整備に伴って閉校になる新堀、広野、浜中、黒森、宮野浦の5小学校と第四中学校の跡地の売却・利活用についても考えていく必要がある。
 歳入面では、ふるさと納税に期待を寄せてきたが、24年度は当初予算で計上していた見込み額を下回り、安定した財源にはなり得ないことが明らかになった。
 これに代わる財源として、ネーミングライツ(公共施設や催事などに企業名やブランド名などの愛称をつける権利)などを進めていく必要はあるが、将来的に酒田市沖洋上風力事業が実現すれば、関連企業の誘致の可能性も高まることから、それらによって安定した税収を確保できるようになるのではないのか、と期待もしている。

議員は報酬相応の仕事を

―酒田市では、厳しい財政状況を背景に市民サービスが削られ、議員は身を切るべきとの声も聞かれる。現行の議員定数と議員報酬をどう受け止めているか。
 現時点では議員定数、議員報酬とも適正だと思っている。ただし人口減少がさらに進む将来を見据えた中で、調査研究は進めていく。市民の皆さんから「議員も身を切るべき」という声が聞かれているということだが、そうであれば、議員も(議員報酬に見合った)それ相応の仕事をしていかなければならない。

議会への関心低い

―先の酒田市議会議員選挙は、投票率が過去最低の47・81%だった。当選した現職と前職の21人は、全員が前回(2021年10月)選の得票数を下回ってもいる。要因をどう分析しているか。
 投票率が過去最低の47・81%だったことは、真摯に受け止めなければならないと思っている。要因はさまざま考えられるが、例えば市議選前に現職議員(当時)による不祥事が発生し、それによって市議会全体への信頼が大きく損なわれた部分があったと思う。
 現職と前職が前回選から得票数を減らした背景には、新人に対する期待の大きさがあったことは間違いないが、議会活動に対する市民の皆さんの関心が低かったことも大きな要因の一つ、ととらえている。
 4年後の次期市議選に向けては、投票率を向上させていかなければならない。議会活動の中には、市民の皆さんに知られていない部分もあると考えており、情報発信の強化などの対策に取り組んでいかなければならないと思っている。

定数削減の調査研究へ

―議会改革推進特別委員会を設置した。改選前にも同委員会は設けられていて、委員長を務めていた。新たな委員会では、どのようなテーマを議論するのか。
 酒田市議会では、市議会基本条例第2条第3号に定めた「市民の多様な意見を集約し、政策立案及び政策提言(以下政策提言等)の強化に努める」に基づき、政策提言等の進め方(政策サイクル)を盛り込んだ政策提言に関するガイドラインを24年7月に策定した。
 政策サイクルとは、総務、民生、建設経済の3常任委員会が2年1度、それぞれ市民や関係団体との対話を通じてテーマを決め、議員間で討議した政策提言等を行い、検証するというもの。
 政策サイクルは既に回り始めているが、特別委員会には▼もう少し掘り下げた形でテーマを決められないか▼市民の意見をどのように聞けばいいのか▼議会活動の情報発信方法をどう強化していくのか―などの検討を求めている。
 加えて議員定数の適正化の検討も託している。次の改選時に、酒田市の人口は9万人を割り込んでいることが想定され、その時に市民の声として出てくるのは、議員定数の問題だと考えているからだ。
 そうした状況を踏まえ、現行の議員報酬と定数を減らした場合の、各常任委員会での審査案件への影響などを含めた形で、議員定数の調査研究を行ってもらうことにしている。

協議会資料の公開検討

―議長選後のあいさつで「開かれた議会として、市民の皆様への情報発信を積極的に行い、市民対話と活発な議員間討議により、議会に対する信頼と期待に応えていく」と述べていた。具体的にどう取り組むのか。
 以前は市内の中学校区単位で議会報告会を開いていたが、自治会の役員の方のみが5人ほど、多くても10人程度しか集まらないという状況が目立っていた。
 それに代わるものとして、現在は政策提言等のテーマを決める際に、広く市民の皆さんと対話を行い、さまざまな意見を吸い上げていこうと考えている。
 情報発信では、議会のホームページによる発信が大事になってくる。議案や3常任委員会の資料などは載せているが、まだ公開できていない情報もある。
 市長が議案を提出すると、本会議前に各常任委員協議会を開くが、任意の会議でもあり、政策形成過程のものを含む場合があることから、協議会資料は案件のみの公開にとどまっている。議員間で開いた勉強会の資料なども公開はしていない。
 原則は、早い段階で市民に情報提供をしたいと考えており、他議会の状況も勉強しながら、市当局ともすり合わせをしていきたい。

休日・夜間議会の可能性も

―議会に対しては、市民の間から「行政の監視機能を果たしていない」「当局の追認機関になっている」などと指摘する声が聞かれている。こうした指摘にどう対応していくつもりか。
 三つの常任委員協議会や常任委員会の中では、議員間での議論や当局とのやり取りなどは活発に行っており、「行政の監視機能を果たしていない」とか「当局の追認機関になっている」といった指摘とは異なる状況もある、と思っている。
 3常任委員会は原則公開しているが、日中に働いている人たちが傍聴するのは難しい。議会活動をもっと知ってもらうため、全国の一部議会でも実施している、休日議会や夜間議会の可能性を検討していかなければならないと考えている。
 加えて議会のホームペーに3常任委員会の議事録を公開していくなど、できるところから改善をしていきたいと思っている。

通年議会で災害に対応

―市民の間からは「市議会が導入した通年議会のメリットがよく見えない」との声も聞かれる。通年議会で議会はどう変わったのか。
 通年議会は24年度に試行期間として導入し、25年1月から本稼働している。
 一つの例だが、昨年7月25日に発生した豪雨災害の際に、臨時議会を開いて議論を重ね、専決処分をすることなく、計12回の補正予算を組むことができた。これも通年議会を導入したことによる大きなメリットだったと言える。

庄内延伸の推進運動盛んに

―高速道路の整備や鉄道の高速化、庄内空港の機能強化、酒田港の利活用は、酒田市の将来を左右する喫緊の課題といえる。どう対応していくのか。
 高速道路の早期整備に向けては、未接続のままとなっている新潟県境区間を中心に、積極的に運動を展開していきたいと考えている。
 山形新幹線の庄内延伸については、酒田市が単独で動くのではなく、庄内と最上の計13市町村が進める形のため、議会としても歩調を合わせて進めていく。
 吉村県知事は、庄内延伸に対する市民、地域住民の熱意はどうなのか、行政が盛り上がっているだけなのではないのか、といったことを見ているのだと思う。
 庄内延伸に向けて推進組織の役割を担っていた陸羽西線高速化促進市町村連絡協議会が既に解散しているため、運動は一からやり直すような形で進めていかなければならない。
 まずは市当局と一緒に市民、地域住民の機運醸成を図りながら、推進運動を盛り上げていきたいと思う。
 庄内空港では、滑走路の現行2千㍍から2500㍍への延長や、国際線受け入れのために動線を分離する国際線ターミナル施設の建設が検討されている。県にはぜひ進めていただきたいが、空港利用者から県内、庄内を観光してもらうための具体的なメニューを作っていくことも大事なことだと思っている。
 外航クルーズ船では、酒田港に寄港した乗客から、地元にお金を落としてもらうための観光ルートの開発や、タクシー不足への対応も考えていく必要があり、議会としても勉強していく。
 花王(株)酒田工場の中国向け紙おむつの生産終了の影響などで、酒田港のコンテナ貨物取扱量が急激に減っている。貨物量を増やすため、議会としてもさまざまな企業に働き掛けていくことが必要と考えている。

洋上風力は丁寧な説明必要

―酒田市沖が「有望な区域」に選定されている洋上風力発電事業に対しては、市民の間に賛否の声がある。市民の声をどう吸い上げ、この問題にどう対応していくつもりか。
 税収の確保につながることを考えれば、進めてほしい思いがある一方で、市民の間に健康被害や景観、漁業への影響などへの不安や疑念があることも確かなことだと認識している。
 酒田沿岸域検討部会(酒田部会)に加え、今後は法定協議会も開かれると思うので、その中でそうした不安や疑念について議論をしてもらいたい。そして市民から納得していただけるような丁寧な説明が必要だと考える。
 議会としては、25人の議員それぞれに支援者がいるので、どういった声があるのかを聞いてもらい、議員間で議論しなければならないと思っている。

中町再生は民間主体で

―市では、旧マリーン5清水屋跡地を含めた「市まちなかグランドデザイン」の策定を進めている。旧清水屋跡地の再開発は、酒田市の大きな課題となっているが、どう対応していこうと考えているか。
 市は、中心市街地に位置する中町エリアの再生に向け、目指すまちの姿や実現のための施策などを盛り込んだ全体構想「市まちなかグランドデザイン」を25年度内に策定する。
 策定は、地元経済界でつくる旧清水屋エリアを核とした中心市街地再生協議会と、市が連携して組織する「官民連携連絡会議」が担い、独立行政法人都市再生機構の助言も受けている。
 こうした中、新たな検討体として「まちなかエリアプラットホーム」を設置し、産学官を含め市民から広く意見を聞くことになった。まずはそこでの議論を注視していきたい。
 市民の一番の関心は、旧清水屋跡地の再開発なのだろうが、エリア内のゾーニングを含めて考えてほしいと思っている。具体化に向けては、行政が旗振り役となって進めるのではなく、民間主体で進めてほしいと思っている。

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