郷土の未来をつくるコミュニティペーパー(山形県庄内地方の地域新聞)
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全文掲載

本紙主催 新春座談会
山形新幹線の延伸、好機逃すな
「庄内生き残りへ、鉄道高速化と空路充実を」[1]

 吉村美栄子山形県知事が山形新幹線の庄内延伸に意欲を見せ、庄内の首長や産業界にも呼応する動きが出てきた。一方で県は庄内空港への国際ターミナル設置計画も進めている。少子高齢化が進む庄内地方の生き残りをかけ、鉄道高速化の重要性や可能性と波及効果、また庄内空港の国際ターミナル整備と東京5便通年化などを、12月6日に三川町なの花ホールで話し合った。連載1回目は、東京まで2時間半で行ける中速新幹線の話を中心に掲載する。司会は菅原宏之本紙編集主幹。文中敬称略。

写真 阿部 等 氏/(株)ライトレール代表取締役社長
東京都生まれ。東京大学工学部都市工学科卒。同大学院修士修了。東日本旅客鉄道(株)で鉄道の実務と研究開発を経験。その後、交通コンサルタント業務に従事し、鉄道の活性化策を多数提案している。

写真 工藤 隆 氏/庄内町商工会長
庄内町(旧余目町)生まれ。1985年足利工業大学(現・足利大学)卒。2007年庄内町商工会理事、14年副会長、22年会長。(株)工藤建設代表取締役。(株)イグゼあまるめ代表取締役社長、同町建設企業組合理事長。

写真 西村 修 氏/酒田観光物産協会長
酒田市出身。仮設機材工業(株)代表取締役、酒田まちづくり開発(株)代表取締役、NPO法人パートナーシップオフィス理事長。酒田商工会議所副会頭、東北ブロック商工会議所青年部連合会長などを歴任。

写真 佐藤 藤彌 氏/元山形県議会副議長
酒田市生まれ。酒田市議会議員を3期務めた後、1999年4月の山形県議会議員選挙で初当選。以後、連続5回当選。山形県監査委員、山形県議会副議長などを歴任。24年5月に旭日中綬章を受章。

写真
座談会は12月6日に三川町で開いた

庄内〜東京間を2時間半に

司会 今日はありがとうございます。庄内地域の鉄道高速化に向けては、山形新幹線の延伸と、羽越線には高速化とフル規格新幹線の二つの考え方がある。JR東日本のご出身で鉄道に非常に詳しいライトレールの阿部さんは、どういうふうに見ているのかを伺い、それから皆さんに伺いたい。

阿部 山形新幹線の庄内延伸の話は、私が交通計画のコンサルタントの立場で、鉄道の活性化策について日本全国でいろいろな情報発信をしている中、2016年に酒田市役所の方から相談を受けたのがきっかけ。
 その当時、「山形新幹線を新庄から陸羽西線を活用して庄内に延伸したいので、知恵を出してください」と言われた。東京駅から直通で庄内行きを運行しても、所要時間が5時間近くになってしまう。庄内空港まで飛ぶのと比べ時間がかかり過ぎる。移動のために半日も使うのでは、鉄道を使う人は限定的。伸ばすだけではなく、高速化して所要時間を短縮してこそ多く使われ、ビジネスでも観光でも役立つものになります、とお話させていただいた。
 そして「線路と車両に対して、技術開発も含めて目いっぱい創意工夫をして、どこまで短縮できるかを分析してみましょう」という話になった。
 分析した結論は、庄内〜東京を2時間半まで短縮できる可能性があるということ。今の技術のままでは駄目で、線路も車両も目いっぱいの技術開発をする。国の政策として鉄道のイノベーションに関する技術開発プロジェクトを立ち上げ、鉄道総合技術研究所という日本の鉄道技術の総本山が中心になり技術開発をした上で、東京と庄内を結ぶと、新幹線区間のスピードアップも含めて2時間半まで短縮できる可能性がある、とまとめた。
 それを翌17年に、酒田市が主催して2回開催した講演会でお話した。当時の丸山至市長も酒田商工会議所の弦巻伸会頭も「非常にいい話だ、これをぜひ進めたい」とお考え下さり、県を含め関係各所に提案したが、当時は県がとにかくフル規格新幹線という考えで、残念ながら受け入れられないまま8年間が過ぎた。
 それが今年の春、コミュニティしんぶんのスクープで、吉村県知事が単独インタビューで「山形新幹線の庄内延伸はあり、ぜひ地元から提案・要望をしてください」とお話しされ、その後、県議会でも正式答弁された。それに呼応して市長、商工会議所会頭も前向きに進めたいと、12月8日には庄内、最上の首長ら政官財そろって知事に要望を行い、今回は本当にチャンスだと考えている。

羽越新幹線開通は22世紀後半か

阿部 その際、16年以来お話しているように、単純に直通するだけでは首都圏から5時間近くかかり、十分な効果を期待できず、高速化とセットで実行してこそ価値がある。
 田中角栄元首相が昭和40年代に日本全国に新幹線ネットワークの絵を描いた。それから50年以上が経ち、太平洋側は函館から東京、大阪、福岡、鹿児島までつながった。九州は太平洋側というより西側。それに対して日本海側は、北陸新幹線の上越から敦賀のみ。
 田中角栄元首相が描いた全国の絵の中で今進捗しているのは、整備新幹線と称する整備計画路線。その中で残っているのは3区間。北海道の函館から札幌までが工事中で、38年度以降に開業予定。
 北陸の敦賀から大阪はルートをどうするかで、いろいろな意見が出て調整できず、着工にすら至っていない。西九州の新鳥栖から武雄温泉も、佐賀県が着工に反対して進んでいない。それらが仮に全て順調に進んだとして、どんなに早くても50年まではかかる。
 そこから先に基本計画路線と称する3千キロが控え、羽越新幹線も入っている。そのほかに山陰とか東九州、四国ともろもろ入り合計3千キロある。
 今、日本国で新幹線を建設できるのは年間15キロぐらい。3千キロを建設するのに、割り算をして200年かかる。ということは、仮に50年に基本計画路線に着手できたとして、完成するのが2250年。その中で羽越新幹線の優先順位は、客観的に見て決して高くない。
 高松・松山・大分と、ずっと人口の多い都市が控え、そちらが優先されて順番待ちをして進めた中で、客観的に見て恐らく22世紀後半に開業できるか、という話になってしまう。
 それでは絶対に日本のためにならない。そこで国土交通省を含めて関係各所に、技術開発により在来線の線路と車両を目いっぱい工夫し、最高速度300キロはできないけれど、乗り心地も安全性も問題なく200キロにはできますよ、と提案している。

中速新幹線なら全国20年で完成

阿部 山形新幹線は、板谷峠の曲線区間の速度制限が70、80キロぐらいで極めて低速なのを、1・5倍ぐらいに引き上げることが技術的にできる、全国に展開しましょうとも提案している。
 それを以前は中速鉄道と称していたが、国民が良いものだとイメージできるように、最近は中速新幹線と称している。中速新幹線を山形新幹線の庄内延伸にも適用し、基本計画路線全てに適用する。
 フル規格だと年間15キロぐらいしか造れないが、中速新幹線による在来線の改良なら年間150キロぐらい造れる。工事費はフル規格よりずっと安く、早い段階から高速化できて売上が上がり、それを財源にどんどん新規の投資ができるようになる。年間150キロ造れると3千キロが20年間でできる。
 これから技術開発をしっかりして、20年代末に本格的に着手し、それから20年であれば40年代中に、日本全国に中速新幹線ネットワークが完成する。庄内延伸も、新潟から庄内も含めて、そういったことを日本国としてやるべきではないか、と10年来、関係各所にいろいろ提案を重ねて来た。
 国交省もようやく検討を始めようか、在来線の高速化をどこまでできるか技術的にしっかり詰めようかと、半歩足を踏み出したぐらいのところまで来た。
 今の時代、昭和の時代の官僚主導から政治主導に切り替わった。昭和の時代は、霞が関の課長と言えば、その分野に関しては日本全体を仕切るポジションだったが、今は国交省主導では物事を進められない。
 政治家も含め、地域や業界からの要望が上がってきて初めて実行できる。「100年も200年も先のフル規格新幹線より、5年10年のスパンで実現できる中速新幹線を実行してほしい」という声が日本全国で上がれば、霞が関も動けるようになる。
 国家プロジェクトとして技術開発をテーマに位置付け、予算もしっかりつけられる。ぜひ今回の山形新幹線の庄内延伸は、単なる直通運転でなく、高速化して最高速度200キロ、平均速度150キロぐらいで首都圏と庄内を2時間半で結ぶようにしたい。
 庄内と山形県の県都である山形市との間も1時間かからずに結べる。車で行って2時間かかる、雪道だとさらにかかるのに比べ、半分以下の時間で行き来でき、非常に価値がある。
 日本全体の中速新幹線を進める中のモデルケース、第一成功例に、ぜひここがなってほしいと願い、今日地元の皆様といろいろ意見交換させていただきたい。

観光新幹線で人口減対策を

司会 県知事が山形新幹線の庄内延伸に前向きな発言をしたということで、西村さんはどうお考えか。

西村 酒田観光物産協会長として出席させて頂いているので、観光の側面から個人的意見ということでお話をさせて頂く。まず地元が直面している最大の課題は人口減少。酒田市の現在の人口は約9万2千人で、昨年1年間だけでも約1800人が減っている。この状況が続くと、2040年には約7万4千人まで減少すると予測されている。
 その頃には生産年齢人口の減少と高齢化により、地域のさまざまな経済需要は現在の4割減から半減すると見込まれている。このまま従来の事業だけを続けていけば、15年後には売上が半分になる可能性があり、まさに緊急事態だと言える。
 地域の縮小は避けられない現実だが、人口が減っても地域の豊かさを持続させる方法の一つが、観光人口・交流人口・関係人口を増やすことだと思う。そして、この観光・交流人口を増やすための最も効果的で大きな手段が、山形新幹線の庄内延伸であると確信する。まさに「観光新幹線」という戦略的事業。
 県知事から延伸に対する前向きな意向が示されたことは、この事業を実現するための、まさに最後で最大のチャンス。この機会を逃すことはできない。庄内地域が一丸となって山形新幹線を新庄から庄内へ延伸することは、庄内地域の存続を左右する正念場。だからこそ躊躇することなく、いたずらに議論に時間を費やすことなく、延伸の実現に向けて直ちに行動すべきである、と私は強く考えている。

司会 佐藤さんは県議時代からずっと関わってきている。県知事の発言について意見を伺いたい。

佐藤 まずコミュニティしんぶんのスクープに感謝を申し上げたい。私も県議会で新幹線を庄内に延伸してくださいと3度質問しているが、県知事は山形県全体の交通体系の中で考える、と3回とも同じ答弁だった。議場ではまた同じ質問をやっている、まだ諦めないのか、とやじられもした。
 しかし、県知事はやらないとは言ってない、と思っていた。「県全体の交通体系の中で考えましょう」という答弁しか頂いていなかったが、今回ここまで踏み込んだ発言に大変喜んでいる。
 やっぱり内陸と庄内を鉄路で結ぶということには大きな意義がある。県立の施設は大体内陸に偏重している。そこへアクセスする手段となる。東京までと考えなくても、まず山形市と庄内が鉄路で結ばれること。
 山形県内も新幹線沿いは全て人口減少率が少ない。新幹線が無い鶴岡、酒田、庄内は人口減少率が非常に高い。やはりこれは鉄道だなと前から思っていた。

フル規格の整備は不可能

佐藤 そもそもは「べにばな国体」に合わせて、衆議院議員の鹿野道彦さんが中心になって、国の政策の一つとして、日本で初めてのミニと呼ばれる山形新幹線を走らせた。
 その後、当時の高橋和雄県知事は新庄市まで、県費単独で延伸を決断し実行した。その後の選挙公約に庄内まで延伸したいと公言していたが、わずかな差で選挙に負けてしまった。勝った斎藤弘県知事はB/C(費用対効果)を考えた。羽越本線の新潟から酒田までの曲線を直したりトンネルを掘ったり、少し改良すれば時間短縮が可能とした。それはB/Cで考えると陸羽西線よりも安いと。
 それで県の方針が変わった。同時に整備新幹線という亡霊みたいな新幹線構想、田中角栄元首相が昔描いた新幹線構想を引き出して、奥羽新幹線も羽越新幹線も整備新幹線で行こう、という目標に切り替わり、県の運動となった。
 構想は良いけれど、実際は不可能である。考えられないし、新潟から庄内まで時速300キロで走るにはフル規格の整備新幹線になる。それは高架でないとできないし、莫大な投資は誰が負担するのか。目標はいいけれど、それによって山形新幹線の庄内延伸が犠牲になったと思っている。
 当時の酒田市長は庄内延伸の陸羽西線高速化促進市町村連絡協議会を解散し、後ろ向きになった。
 整備新幹線になると、鶴岡、酒田両方の駅には止まらないと思う。鶴岡か酒田か一か所になる。整備新幹線で20キロ間隔で止まる駅なんてないのではないか。
 羽越整備新幹線の庄内延伸と旗を上げて、山形新幹線はその次だと。駄目だとは言っていないが、二の次だと。それでどんどん遅れてきた。今回、コミュニティしんぶんのインタビューで、県知事が酒田で盛り上がってほしいと言っている。私は秋田県南もにらんだ庄内延伸の発言ではないかと思っている。
 今の機会はまたとないチャンスかもしれない。せっかくのチャンスは、とりあえずは山形と新庄と酒田が鉄路でつながること、安い費用でいいんだと思う。

内陸の文化運動施設も便利に

司会 山形新幹線の庄内延伸は一時、実現がなかなか難しそうな雰囲気になったが、いま県知事の前向きな発言があり、地元でも盛り上がりが少し出てきた状況だ。工藤さんはどんな意見をお持ちか。

工藤 私は大体東京に行く時には羽越本線を使う。山形新幹線は一度しか使っていない。車窓も好きで、羽越本線は海が見えるし時間的にもほとんど同じ。4時間10分ぐらい。だから山形新幹線よりも羽越本線が伸びた方がいいのかなと思っているが、いろいろな選択肢があってもいいと思う。
 例えば飛行機を使うか電車を使うかといえば、私は東京まで行くなら電車の方。庄内空港までぎりぎりでは行けないから、1時間半前には出て、庄内空港で40分か50分ぐらい過ごすことになる。羽田に行ってからも、ターミナルビルまでバスで移動させられたりして、都心まで行くとすると、到着するのに3時間半ぐらいかかる。電車だとぎりぎりに行っても乗れるから、乗っている4時間が延伸で3時間ぐらいになるのであれば、逆に鉄道の方が利用価値はあるのかなと思っている。
 羽越本線よりも陸羽西線を使った方が若干スピード的には早くなるだろうと思うし、利便性を考えれば、ぜひやっていただければと。あまり飛行機と大差はないなと感じている。
 これが大阪に行くとか沖縄に行くとなれば話は別だが、そういう面で言えば、飛行機よりも逆に利便性はいいということで、これからのJRの売りになるのではないのか。

佐藤 東京も大事だけど、東京ではないと思っている。内陸と庄内との交流、チャーター便で山形空港に下りたら庄内に来る、庄内空港にチャーター便で降りたら内陸の方に行く。みんな東京まで何時間という話をするが、そういうことではないと思っている。
 例えば山形の県民会館、あるいは野球場、サッカー場。そういうところに庄内はあんまり参加できていない。モンテディオ山形もみんな盛り上がっているが、庄内では盛り上がらない。参加できないからと思う。
 天童駅がモンテディオに近い場所に移設した。庄内からも電車があれば、モンテディオを応援して帰ってこられる。県民会館で何かのショーがあれば、気軽に見て帰ってこられる。車で行ける、高速道路があるじゃないか、という意見もあるが、高齢化社会では電車が一番の乗り物である。

インバウンド推進に不可欠

司会 山形新幹線の庄内延伸による波及効果を、観光面でも、ご自分の仕事の面でも結構なので聞きたい。

西村 先日、すごいニュースが飛び込んできた。米国大手メディアのナショナルジオグラフィック誌が発表した「2026年に行くべき世界の旅行先25選」に、なんと日本で唯一山形県が選ばれた。これは本当にびっくりするニュースで、一昨年の京都、去年の金沢と並ぶ、世界的観光地の評価を得たのだ。
 どうして山形県が選ばれたのかというと、まずは「未開の地」であるということ。全国の宿泊観光者総数の約1%しか訪れていないということで、今後の伸び代がいくらでもあると私は感じた。次に「山々の歴史」ということで、出羽三山、鳥海山、山寺、蔵王の樹氷など、山岳信仰や歴史に裏打ちされた山々が注目されているということ。それから豊かで美しい四季の移り変わりが際立っているということ。そして地元の豊かな「食文化」が高く評価されたようだ。
 こんな世界的な評価を受けた山形県は、名実ともに国際的観光地になることが求められていると思う。庄内地域には、クルーズ船が寄港できる港や庄内空港という、国際的なアクセス環境がすでに整っていて、非常に恵まれている。ここに山形新幹線が加わることで、海・空・陸の三位一体の交通体系が完成し、庄内地域は、まさに国際観光の重要な拠点となり得る。山形県全体が選ばれたのだから、県内全体が均衡ある交通ネットワークで結ばれることが不可欠だと思う。

司会 2024年の外国人の延べ宿泊者数は山形県が25万6130人で、東北では秋田県に次いで少ない。最多は宮城県の77万6630人。ナショナルジオグラフィック誌の発表を契機に観光需要が高まる可能性はある。
 今後の進め方だが、推進組織が解散している。期成同盟会などを含めて庄内一丸と言った場合に、どういったことが考えられるか。

佐藤 今まで新庄市は秋田延伸を唱えていた。ところが、今回は山科朝則新庄市長が酒田延伸を表明している。最上地域の町村長も全員賛同した。消極的な鶴岡市にも分かってほしい。鶴岡市には観光素材がたくさんあるし、鶴岡市のためには絶対になるのだが、なぜ消極的なのかが分からない。12月8日に県知事要望会があった。鶴岡市長も鶴岡商工会議所会頭も欠席している。
 やれる人がまず動く。そこを吉村県知事は「地域で盛り上がってほしい」と言ったのだと思う。酒田市で盛り上がってほしいと思う。

陸西は羽越整備の布石

阿部 鶴岡市が前向きにならないのは、庄内延伸が優先されると、新潟ルートが弱体化するのを恐れているのではないか。
 中速新幹線を提案している中で、新庄〜庄内ルートを全国のモデルケースとして、真っ先にやる勢いで地元に盛り上がってほしいのと同時に、日本全国の中速新幹線ネットワークの中には、当然ながら新潟〜庄内ルートも入る。新庄ルートで成功すれば、次のステップでは新潟〜庄内ルートもやると、鶴岡市長も鶴岡商工会議所会頭もご理解くだされば、賛同を得られるのではないか。

司会 庄内町の経済界には、どのような意見が多いのか。

工藤 大体庄内は二つに分かれている、と常に私も思っている。庄内は一つではない。悪いのだけれども。
 例えば、駅を設けるとしたら、余目駅を発着にすればいい。酒田駅も鶴岡駅も停まらない。そうしたら、どちらも駄目とは言えない。
 鶴岡であれば、羽越本線を持ってきて停めたいという思惑はあろうかと思うし、酒田であれば、とりあえず鶴岡は関係がないから山形新幹線を通そう、という話なのだろうと思う。
 庄内町はちょうど中間点なので、真ん中に停めてしまえばいいのではないのか。余目駅はちょうど陸羽西線と羽越本線の結節点になるわけなので、乗換駅になる。両市の意見を集約して、ここに停めてしまえばいい。
 飛行場もそのような感じでできている。鶴岡も駄目、酒田も駄目、それでは間に造ろうかという感じになっているので、間に停めてしまえば新幹線の駅も一つで済むし、どちらも駄目とは言えないのかもしれない。終点は余目駅にしてしまえばいい。

阿部 空港は1カ所にしか造れないが、鉄道はラインとして線路が伸び途中に駅を造れる。私が17年に酒田市で2回公演させていただいた時に提案したのは、東京から山形、新庄、余目まで来て、下りは分割、上りは余目で併合して山形、東京方面に向かうというもの。酒田、鶴岡の両方、そして余目にもメリットがある。
 今の運行ダイヤでは、余目駅がパーク&ライドしやすいことから、酒田の人も鶴岡の人も車で移動して余目駅で乗り継ぎ、山形や東京と行き来きしている人も多い。
 高速バスでは、鶴岡と酒田のどちらも本数を多くするとコストがかかり過ぎるので、鶴岡を一旦経由して遠回りして酒田へという便もある。鉄道は、分割・併合することで両方にメリットがあり、余目駅にもメリットをもたらす。

最小費用最短期間で実現大事

西村 観光交通ネットワークの一つとして、私は最上川渓谷の古口駅を「最上川舟下り駅」とすべきだと思うし、船で下ると清川に来るので、清川駅を「出羽三山山麓駅」とする。清川駅から立谷沢川渓谷沿いに南に約12キロ「登坂電車」を走らせ、そこから西へ約3キロ山を登っていくと出羽三山神社に到着する新たなアクセスが生まれ、出羽三山という山々の歴史を体現する極めて重要な観光拠点になり得る、と思っている。
 一部では羽越本線の新幹線フル規格化を期待する声があるが、先ほどの阿部さんの話からすると、実現できたとしても250年も先のこと。もう全く絵に描いた餅に等しい幻想を追うと言わざるを得ない。
 今すべきことは、庄内地域が一丸となり、吉村県知事と協力体制を確立して、山形新幹線の庄内延伸を何としてでも実現すること。ましてや、その恩恵は特に鶴岡地域に出てくるのだから。
 私は前から提案しているのだが、南野駅(陸羽西線)から真っすぐ西に10キロ線路を伸ばすと、西袋駅(羽越本線)を通って庄内空港に着く。西袋駅の側には高規格道路新庄・酒田線が通っている。庄内空港の側には日本海沿岸東北自動車道が通っている。西袋駅に広大なパーク&ライド施設を造れば、高規格道路ともつながるし、日本海沿岸東北自動車道ともつながる。
 羽越本線上にリレー電車を走らせれば、鶴岡駅や酒田駅とも短時間でつながる。空港と新幹線・在来線、そして高速道路との一体利用ができることになる。南野駅から西にたった10キロの延長。田んぼの真ん中なので、用地買収も比較的に容易なのではないか。

司会 富樫透庄内町長にお話を伺った際、余目駅に隣接する駐車場に車を置き、羽越本線の特急いなほに乗車する人が結構いるということだった。そして「もう少し駐車場を広くしてくれないか」という声が届いている、と話していた。西村さんがおっしゃった大きなパーク&ライド施設を整備するということも、可能性としてあるのではないかと思う。

佐藤 工事を誰が負担するのかという問題がある。山形県がやれるのか、国がやってくれるのか、JR東日本がやってくれるのか。いろいろなことが想定されるが現実はお金の問題。公共投資はあまりできなくなってきている。そして人口がガタガタと減ってきている。
 理想を言えば、いろいろとある。フル規格の羽越新幹線が庄内に整備されれば一番いいのだが、費用がかかって難しい。誰が費用を負担するのかを考えると、山形県の単独事業で整備する場合、まずは最小の費用で実現すること。最小の費用と最短の整備期間でつなげる。私はそれが大事ではないのかと思う。

西村 先ほど私は、延伸に関していろいろと理想を並べたが、佐藤さんのおっしゃる通り、まずは最小限の費用と最短期間での整備ができるよう、まずは第一弾として新庄から余目駅までの延伸とし、余目駅東側の民間の広大な敷地の一部をパーク&ライド駐車場として、新庄駅~余目駅間約43キロの区間を、主に県の事業で何としても実現して頂きたいと願うところだ。

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