本紙主催新春座談会の連載最終回は、庄内の高速道路の整備は全国的に見ても立ち遅れていること、国の予算投入先を東京偏重から地方と日本海側へと改めるべきこと、鉄道は投資効果が高いことなどを話し合った。司会は菅原宏之本紙編集主幹。文中敬称略。
阿部 等 氏/(株)ライトレール代表取締役社長
東京都生まれ。東京大学工学部都市工学科卒。同大学院修士修了。東日本旅客鉄道(株)で鉄道の実務と研究開発を経験。その後、交通コンサルタント業務に従事し、鉄道の活性化策を多数提案している。
工藤 隆 氏/庄内町商工会長
庄内町(旧余目町)生まれ。1985年足利工業大学(現・足利大学)卒。2007年庄内町商工会理事、14年副会長、22年会長。(株)工藤建設代表取締役。(株)イグゼあまるめ代表取締役社長、同町建設企業組合理事長。
西村 修 氏/酒田観光物産協会長
酒田市出身。仮設機材工業(株)代表取締役、酒田まちづくり開発(株)代表取締役、NPO法人パートナーシップオフィス理事長。酒田商工会議所副会頭、東北ブロック商工会議所青年部連合会長などを歴任。
佐藤 藤彌 氏/元山形県議会副議長
酒田市生まれ。酒田市議会議員を3期務めた後、1999年4月の山形県議会議員選挙で初当選。以後、連続5回当選。山形県監査委員、山形県議会副議長などを歴任。24年5月に旭日中綬章を受章。
司会 高速道路の整備がある程度進んできている。ただ県境区間、特に新潟県境のめどが見えていない。未接続が続く状態では、地域の活性化は難しい。高速道路がつながると、空港、鉄道と合わせ庄内の可能性がぐっと高まるのだが。
佐藤 高速道路がこれまでなぜつながらなかったのか。県知事や首長が国交省へ行って陳情が新聞に出る。それで工事が進む訳でない。県が負担金を出しているので、県のさじ加減がある。県には一定の予算しかないし、県知事がオーケーしないと道路はできない仕掛けになっている。どこに予算をつけるかは県知事の裁量。この道路をやりますよと計画を発表した箇所は知事も分かっていて予算をつけるけれども、他は定期的に予算配分するだけで、力を入れることはない。
国交省に行って総枠予算が増えれば別だが、そういう仕組みになっていない。大臣に会ってきて何か変わったことは1回もない。やり方を間違ってきたと思う。県がどう思っているか、県がどの道路を大事と思って優先するのか。きちんと理解してもらう努力をしていない。議員もそうだけど。そういう視点でちゃんと知事と向き合えばいいと思う。
道路は交流の大きい柱だ。全国で高速道路がつながっていない箇所があるのだろうか。おそらく日本で一番遅れている。私は村上市から由利本荘市までは日本のチベットだと思っている。酒田市と新庄市だって危ない、いつ工事が止まるか分からない。こんなにつながっていない地域はない。
工藤 車を運転していて、県内の高速道路の整備はそんなに遅れていないと思っていた。けれども一度、四国まで車で行かなければならないことがあって、朝日まほろばインターチェンジ(IC)から愛媛県の松山市まで、一度も一般道を使わないで走行した。全部つながっている。それで帰りの朝日まほろばICから庄内までが長く感じた。やはり山形県が遅れていると初めて感じた。
朝日まほろばICから四国まで1回も高速道路を降りなかった。それでも18時間かかった。一般道の箇所、朝日まほろばICから庄内の自宅までで3時間ぐらい要した。
道路はやはりつながらないとまずい、これだけ遅れている県は他にないだろうと言える。鉄道も空港も必ず降りてから道路を使う。一般道もやはり整備しなければならない。
司会 県は庄内の高速道路の整備状況に関してどういう見方をしているのか。
佐藤 現実として庄内の高速道路整備は遅れている。内陸はつながった。東北中央自動車道の栗子トンネルは全国で2番目に長いトンネルだと聞いている。米沢の「道の駅」はにぎわっていると報道されている。
一方こちら庄内ではどうか。庄内は道路がつながっていない。横も縦もつながっていない。東北中央自動車道はもう県境まできて完成する。ここ庄内だけ一番進まない。日本海沿岸東北自動車道(日沿道)の温海〜朝日まほろばIC間はいつになるかわからない。
誰も来ないし人口もどんどん減っていく。少子高齢化は想定以上に進んでいる。やっぱりちゃんと人が住めるような街にしないと住まない。人が減るのは、なぜか分からないが、みんな東京に行ってしまう。東京の人口は増えて他は増えない。
仙台市は求心力がある。仙台市が近い山形市周辺は衛星都市という感じでまだ活気がある。仙台市までのバスが10分に1本あるから利便性があって、仙台市に勤める人が山形市に住んだりしている。周辺の天童市、東根市なども山形新幹線の影響もあって、人口は減っているが減少率は緩やかだ。
酒田、鶴岡両市の人口減少はより深刻だ。2024年に酒田市で生まれたのが360人。1日1人しか生まれない。小学校は3校で足りるとも言われている。間もなく数年ではっきりすることだが、非常に危機たる状況だ。そこで起爆剤として、内陸とつながる新幹線を延伸させたい。交流を盛んにできる。
山形県の施設が庄内に少ないことも挙げたい。高校と空港だけ。県民会館、スポーツ施設の県民グラウンド、野球場は全部山形市周辺だ。
高速道路の話をしているが、高齢社会では電車、鉄道が必要だろう。その意味でも、東京もいいが、山形県内の交流を図るために、新庄〜酒田間の電車が必要と考える。中速新幹線になれば一番いいが、予算でできる所からまず着手する。
山形新幹線の米沢トンネルの事業費が2300億円。国もJRも負担額が見えない。料金、県負担はいくらなのか見えてこない。
今は米沢市でも山形市でも、新幹線の庄内延伸には賛成してくれている議員が多い。2300億円かけるトンネルを整備して、庄内のことは知らないという訳にはいかない。そういう空気だ。
だから今、この機会を逃して、フル規格の羽越新幹線などと言わずに、まずは内陸とつなげることが第一で、さらに利便性を改良していく方向でいくべきだ。
この機会を酒田市長、酒田市議会がどう感じて行動するのか。注目している。
阿部 佐藤さんの人口問題の話で、昔の1市町単位で子供が1人しか生まれないという厳しい状況は、庄内に限らず、北海道の北方面はもっと厳しい。稚内駅前は本当のシャッター街。昭和の時代は多くの人が行き交っていた所の店が全部閉まり、人が全然歩いてない。稚内駅の時刻表には朝から晩までポツポツとしか列車がなく、とても使えない。それが街の衰退の大きな原因となっている。
先ほどお話したように、社人研(国立社会保障・人口問題研究所)の人口推計は、交通インフラ整備と大規模施設立地がこれまでと同じトレンドの場合はこうなる、という計算結果。
実際には、地方の人口は社人研の推計を下回っている。交通インフラは整備どころか利便性が低下し、大規模施設立地は民間も公共も投資が成り立たないと判断して全然進まない。
学校は統廃合し、公共施設を改修する財源もなく廃止が進んでいる。社人研の想定を下回ったマイナスの交通インフラ整備、大規模施設立地だから、推計以下になるのは当然の結果。
一方、東京でも今後は人口減と推計してきたが、何年か後に検証すると毎回推計が外れ、未だに増え続けている。なぜなら東京は社人研の想定を上回る交通利便性の向上と大規模施設の立地が進んでいるから。
鉄道の改良投資や道路建設、丸の内や虎ノ門、渋谷などの再開発を進めてきた。民間の独立採算でなく、日本中から集めた税金を集中投下して。東京の交通はますます便利になり、大規模施設が次々と立地している。
その結果、社人研の人口減推計は外れ続けている。外れたと言うより、前提条件が違うから当然の帰結としてそうなった。
地方の人たちが暴動を起こしてもおかしくないくらい、国のお金の流れが東京偏重、太平洋側偏重で日本海側にはお金が巡らない。地方の人口減を改善しようと地域の皆さんがいくら頑張っても無理な話。日本全体でお金を大都市から地方へ、太平洋側から日本海側へと流す量が足りていない。
平成1桁のころに悪者扱いされた公共事業は、人口の少ないところに重点的にお金を回していた。日本全体で見ると、国が大都市から地方へお金を流していたと言える。それをバッサバッサ切り、地方へのお金の流れを滞らせた。
地方交付税交付金も、北海道開発予算も沖縄振興予算も昭和の時代と比べ思いきり減らした。
大都市から地方へのお金の流れを滞らせるイコール地方の雇用を減らして人口を減らしている、という当然の結果。それは絶対改めなければいけない。
東京が相対的にはへこみ、日本海側、地方が栄えるようにすべき。いわゆるリバランスだ。交通インフラの充実が肝になる。
阿部 ガソリン暫定税率廃止は、道路交通の視点で見ると由々しきこと。建前上は一般財源だが、実際は道路に対するお金の流れがこれから滞る。
埼玉県八潮市であった下水道管に穴が開き道路が陥没といった件は放っておけず、管理・補修には一定の税金が流れるだろう。そのしわ寄せが建設工事に及ぶ。県境の高速道路、地方都市のバイパスや拡幅といった予算が、日本中でこれからバッサバッサ切られよう。
地方経済への影響も心配。ガソリン暫定税率廃止は与野党とも大賛成で進んだが、建設業を中心に地方へのお金の流れを雇用をさらに減らすことになる。大変なことだと思っていたが、実行してしまった。
道路へのお金の流れを国が滞らせてしまった以上、次善の策としてこれからどうするかを考えたい。私は鉄道を中心に道路、空港、港湾も一通り見ている。
羽越・奥羽本線といった、昭和30、40年代から残されたままの日本中にある鉄道に適正な資金と知恵を投じることが得策ではないか。中速新幹線化とともに地域鉄道を充実させる。二次交通はバス会社としっかり連携する。
今まで、道路と鉄道のどちらに投資した方が社会的にプラスかの比較衡量がされないまま、ガソリン税による財源があるから道路に投資してきた。今回、道路の財源をわざわざカットしたのだから、これからは、道路の新設への投資と既存の鉄道への投資と、どちらが費用対効果が高いかを分析した上で判断すべきだ。客観的に見て、きちんとやれば既存の鉄道に投資した方が地域のためになるはず。
佐藤さんのお話を否定するようで恐縮だが、県境の高速道路の未接続区間をつなぐより、貨物輸送も含めて羽越本線を使える鉄道にする方が費用対効果が高く、地域のためになるのではないか。
日本がなぜ道路偏重になったか。昭和40年代に田中角栄元首相が『日本列島改造論』に「今までは鉄道の時代だったが、これからの時代は道路だ」と書いた。これが以降の日本の交通の姿を決めたと私は思っている。
彼が「鉄道は今まで100年間頑張ってきた。これからもさらにイノベーションを図り、もっとレベルアップを」と宣言していたら、お金の流れが大きく異なり、国民も鉄道に期待し、国鉄もしっかり頑張り、鉄道がパフォーマンスを発揮していたのではないか。
田中角栄元首相の一言で鉄道はしぼみ、道路には大きく投資をした。新潟の県境から四国まで全部自動車専用道路ができているのは、彼がそういう判断をした結果だ。一方で羽越本線や山陰本線は進歩がない。
繰り返しになるが、国が道路財源をわざわざカットしたのだから、これからは適正な投資先として、既存の鉄道と道路の新設とどちらがより有効かを適正に判断しなければいけない。その第1号として山形新幹線の庄内延伸が進んでほしい。
佐藤 なぜ県知事がコミュニティしんぶんに庄内延伸の心境を語ったのか知りたい。
司会 県の第一目標は米沢トンネル整備で、それに対しての県民運動を考えたためか。新庄市までの範囲で運動を展開するより、庄内まで延伸した方が費用対効果もB/C(費用便益比)も高くなるし、国費を求めて国に要望する時に「県民運動として山形県全体でお願いしている」と言える。
さらに言えば、県知事は「新庄から庄内に延伸し、秋田県まで行くという経路は、大いにある」と言った。米沢トンネルの整備にはどうしても庄内、さらにはその先の秋田県を入れて陳情するのが一番良い、という判断もあるのかと思った。
佐藤 県知事は議会では庄内延伸を答弁していない。当面は全体の交通体系の上で考えるという姿勢だった。状況が変わったからと言われれば…。コミュニティ新聞社に県知事は延伸に前向きだという。
しかし、そこまで分かったのだから頑張って機運を盛り上げていきたい。まず電車をつなぐと地域は相当変わる。鉄道には自動車とはまた別の味があるし、中速新幹線は速いというし。
阿部 高速道路より遅い鉄道をみんな使わない。速くすれば状況は全く変わる。利用者は鉄道でも道路でも何でもいい。早く安く行けるものを選びたいだけ。今は鉄道が遅くて高いから選ばない。
司会 やはり庄内延伸を求める声を絶やさなかったことが大きい。ほとんど可能性がないような状況になっても、佐藤さんや西村さんのように要望を絶やさないできた人たちがいたということ。米沢トンネルの整備を本格的に進めようとした時に、県知事はおそらく、国やJR東日本との交渉に庄内延伸の手があったと思い至ったのだと思う。だからその声を絶やさなかったのが大きかったと思う。
佐藤 県議会で答えてくれれば良かった。
司会 最後に新年の抱負を伺いたい。
工藤 まずは陸羽西線が早期に再開してほしい。要望するという新幹線の延伸も結構だが、まず早い方を望みたい。抱負は東京に憧れるのはやめようということ。若者に出ていかれない地域にすること。今日の座談会は鶴岡の関係者にも声掛けしたとのことで、参加がないのは残念だが、陸羽西線については鶴岡にも恩恵があるということを伝えてほしい。新幹線の庄内延伸についても一日も早く実現することを願っている。
阿部 私は東京のよそ者だが、庄内延伸に関して2016年に酒田市から相談を受けて以来9年になる。17年には庄内と山形は1時間以内、東京は2時間半で結べる可能性があると講演した。当時は1ミリも話が進まなかったが、ここに来て県知事が前向きになり可能性の芽が出てきた。
新年に当たり、コンサルの立場として、一日も早く新庄ルートが中速新幹線として高速化され、庄内と県都山形市、首都圏を結び、地域活性化の礎になるよう、お役立ちしたい。
佐藤 県議会での活動を通して果たせなかった新幹線延伸の件が動き出す。この流れを生かさない手はない。鉄は熱いうちに打てというように、地域のみんなで頑張りたい。わからないこと、不確実なことも多いが、とにかく延伸に向けた運動をする。そういう1年になればいいと思う。
西村 繰り返しになるが、地域の急激な人口減少は、まさに緊急事態。定住人口が減るなら、観光交流人口を増やすしかない。その最も効果的で大きな手段が、山形新幹線の庄内延伸、「観光新幹線」の実現。
このたび県知事から延伸に対する前向きな意向が示されたことは、この事業を実現するための「最後で最大のチャンス」であり、庄内地域の将来を左右する正念場でもある。この機会を逃すわけにはいかない。
最小限の費用と最短の期間で整備を進めるためにも、まずは新庄駅から余目駅までの約43キロの延伸を目指し、庄内地域が一丸となって、ためらうことなく、いたずらに議論に時間を費やすことなく、延伸実現に向けて直ちに行動を起こす一年にしたいと思う。