酒田市は総額608億6千万円の2026年度一般会計当初予算案を、2月27に開いた市議会26年定例会第4回3月定例議会に上程した。総額はこれまでで最大だった25年度当初を8億4千万円1・4%下回り、過去2番目の規模となった。24年7月に発生した大雨災害の復旧関連経費が減ると見込んで「投資的経費」を減額と試算したことが要因となっている。補助費等と人件費、扶助費等は増額と見積もったものの、物件費と公債費を減額と試算したことから、「その他の経費」と「義務的経費」はほぼ横ばいで推移すると見込んでいる。新年度は市美術館改修事業や第四中学校区義務教育学校整備事業、鳥海八幡中学校体育館改修工事が本格化し、山形新幹線庄内延伸の実現に向けた施策も始まる。(編集主幹・菅原宏之)
矢口明子市長が市長に就いてから3度目となる予算編成では、施策展開の方向性と重視するポイントに①市民所得の向上と若者・女性の定住促進②市民一人ひとりに「居場所」と「出番」がある社会の実現③災害からの復旧・復興と安心・安全のまちづくり④人口減少・気候変動・物価高騰等に対応したまちづくりの発想―の4項目を掲げた。
予算総額が過去2番目となった要因を歳出の性質別で見ると、社会資本整備に充てる「投資的経費」を、25年度当初から14億3300万円17・9%減額の65億8600万円と試算したことが大きく影響した。
市から各種団体に補助金や負担金などとして交付する補助費等、委託料や旅費などに充てる物件費、地方公営企業の経費を一般会計から負担する繰出金、貸付金などからなる「その他の経費」は、同3億5千万円1・2%増額の295億1100万円と見積もった。
人件費、社会保障として生活困窮者や高齢者、子育て世帯などの支援に充てる扶助費、借入金の元金や利子の返済に充てる公債費からなる「義務的経費」は、同2億4300万円1・0%増額の247億6300万円と見込んでいる。
投資的経費が減額となるのは、24年7月に発生した大雨災害の復旧に充てる災害復旧費を、25年度当初から16億5700万円59・4%減額の11億3300万円と試算したことが要因となっている。農業用施設災害復旧事業を同10億7千万円、林業用施設災害復旧事業を同3億8千万円減額と見込んだ。公共施設の新増設などに充てる普通建設事業費は、鳥海八幡中学校体育館の改修工事が本格化することから、同2億2400万円4・3%増額の54億5300万円と見積もった。
その他の経費がほぼ横ばいとなるのは―
▼全市民に一人1万円分の物価高騰対応生活応援商品券を配布することから、補助費等を25年度当初比7億8800万円7・6%増額の112億800万円。
▼ふるさと納税返礼品の経費が減ると見込み、キャッシュレス決済ポイント還元事業も完了したことから、物件費を同7億7200万円8・5%減額の83億4100万円。
▼後期高齢者医療事業特別会計と定期航路事業特別会計への繰り出しを増やしたことから、繰出金を同1億2800万円2・7%増額の47億8800万円。
▼市が利子補給をして一般財団法人地域総合整備財団が地域振興に資する民間事業者を支援することから、貸付金を同6億7300万円24・2%増額の34億5800万円―と、それぞれ試算したことが主な要因となっている。
同じくほぼ横ばいとなる義務的経費は、公債費を25年度当初から5億1400万円8・3%減額の57億1300万円と見込んだ。市は財政健全化に向け23~27年度に▼財政調整基金の年度末残高を30億円以上確保▼市債発行上限額を30億円以内(5年間で150億円以下)とする「プロジェクト30―30」を進めており、一定程度の成果が出た形となっている。
一方で扶助費を、国が定める運営費支援の基準単価の増加に伴い保育所等入所扶助費が増えると見込んで、同3億1600万円3・0%増額の106億8700万円。人件費を、2年に1度の定年延長による対象職員約20人の退職手当と人事院勧告に伴い職員給が増えると見込んで、同4億4100万円5・6%増額の83億6300万円、と試算したことが要因となっている。
髙橋利広・市財政課長は「24年7月の大雨災害の復旧が進んだことで、予算総額は前年度より小さくなったものの、人件費や扶助費、物価高騰の影響で施設管理費などの経費が増えている。そのため、歳入では前年度と同規模の基金繰入金を見込んだ。このような中でも、引き続き公債費の縮減や公共施設の適正化に努めながら、財政基盤の安定に努めていく」と話した。
施設整備、物価高騰対策、都市機能強化、産業振興などの主要事業は次の通り。
▼美術館改修事業(継続)2億9832万円は、1997年の開館から29年が経過し、老朽化が著しい市美術館を大規模改修し、出入り口の自動扉化や段差対応の手すりも設ける。工事に伴い26年4月〜27年7月に休館する。
▼第四中学校区義務教育学校整備事業(継続)2億4075万円は、市立第四中学校と同中学校区内の6小学校を統合して、33年度の開校を目指す義務教育学校の校舎整備に向け、十坂小学校の改修工事を行う。併せて用地の地盤調査や通学路の安全対策にも着手する。
▼庄内広域行政組合分賦金(新規)1億620万円は、26年4月から公立化する東北公益文科大学の安定的な運営を支援するため、公立大学法人の設立団体に分賦金を支出する。負担割合は県55%、同組合45%。組合負担分のうち酒田市は59・8%を担う。
▼山居倉庫整備事業(継続)9246万円は、国指定史跡・山居倉庫を保存・活用していくために必要となる整備を進める。26年度は建物状況調査や耐震補強実施設計、敷地内水道管の更新工事などを行う。
▼中学校施設長寿命化事業(継続)4億4211万円は、鳥海八幡中学校の体育館を改修し、屋根の断熱塗装や断熱サッシの改修、トイレの洋式化も行う。備品も購入し、体育館ギャラリーカーテンを更新する。
▼物価高騰対応生活応援商品券事業(新規)11億8278万円は、物価高騰に伴う家計負担の軽減と、市内事業者の売上拡大による地域経済の振興を図るため、国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、全市民に一人1万円分の紙商品券を配布する。発送は7月以降、利用期間は8~10月を想定する。
▼山形新幹線庄内延伸促進事業(新規)245万円は、庄内延伸への理解促進を図るため、県やJR東日本などに要望活動を展開し、庄内、最上両地域の市町村などと意見交換を行う。地域住民の理解促進、機運醸成に向けた広報活動、有識者を招いた講演会も開催する。
▼産業振興まちづくり推進事業(継続)1億510万円は、市産業振興まちづくりセンター「サンロク」の運営を支援し、事業者の事業拡大などを補助金で支える。通算4年目となるサンロクと住友商事㈱との共同による庄内事業構想プロジェクト研究事業も行う。
▼観光物産推進事業(継続)3844万円は、JR東日本重点共創エリア山形庄内キャンペーン(7~9月)を実施する。イタリアで4月に開かれるミラノデザインウィークに、伝統工芸品の船箪笥(ふなだんす)を出展する。
▼関係人口創出・拡大推進事業(新規)3155万円は、移住による定住人口や担い手の拡大を目指し、ウェブで市の強みをさまざまな切り口で発信し、首都圏や酒田市で催事を開いて、地域と関わる関係人口の獲得に注力する。
▼水産業振興総務管理事業(継続)4336万円は、山形県漁業協同組合が策定した「事業構造改革プラン」の取り組みを推進するため、県と沿岸2市1町が事業資金を支援する。
防災、教育、健康福祉、環境、まちづくりの主要事業は次の通り。
▼酒田市大火50年事業(新規)80万円は、1976年の酒田大火から10月29日で50年の節目を迎えることから、式典と本町・中町周辺で防火パレードを行う。山居倉庫前の新井田川で、消防職員、消防団員による一斉放水も予定する。
▼防災対策強化事業(継続)7141万円は、災害に備えた食料などの計画的な備蓄や情報伝達体制を整備し、適切な防災体制を構築する。26年度は中小河川ハザードマップデータを作成し、田沢地区に防災行政無線戸別受信機を整備する。
▼小学校給食事業(継続)5億5893万円は、食材費の高騰が続く中、保護者の経済的負担を軽減するため、小学校給食を国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用しながら無償化する。
▼ひとり親家庭自立支援事業(継続)3億175万円は、要件に該当するひとり親家庭に対し、児童扶養手当の支給や、自立のための資格取得に要する費用などを補助する。国の補助要件緩和に基づき、養成機関での修業期間の生活費を支援する、ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金などの支給対象者を拡充する。
▼母子保健事業(継続)6364万円は、妊娠・出産・子育て期の不安や悩みを支援するため、乳幼児健康診査や妊婦健康診査、教室、相談などを行う。就学前の5歳児の特性を早期に発見し、適切な支援を行うため、5歳児健診を始める。
▼森林経営管理推進事業(継続)1億7163万円は、所有者が委託を希望する森林に関し、経営管理の内容などを定めた集積計画を策定する。松くい虫被害木による2次被害を防止するため、枯損木の伐倒を行う。
▼森林病害虫等対策事業(継続)9050万円は、松くい虫被害により、所有者単独の対応では適正な整備の実施が困難な森林に、森林所有者との協定に基づき森林再生に向けた伐採や植林を行う。併せて東北電力ネットワーク㈱との協定に基づき、被害木処理費用の一部を負担する。
▼中町エリア再生官民連携事業(新規)50万円は、官民の多様な人材が参画するエリアプラットフォームを設け、市まちなかグランドデザインで示す「目指すまちの姿」の実現に向けて、官民が連携して中町エリアの再生を目指す。
主な歳入を見ると、自主財源の柱となる市税は、25年度当初から1億2千万円0・9%増額の135億4400万円(歳入に占める構成比22・2%)と見積もった。
個人市民税は、会社員の給与所得や米価高騰に伴う米農家の所得の増加を見込んで、同1億8200万円4・0%増額の46億9千万円。法人市民税は、24年度の決算見込みを参考にして、同500万円0・7%減額の8億4200万円。固定資産税は、26年度が土地と家屋の評価替えの年度ではないことから、ほぼ前年度並みで推移すると見込んで、同1700万円0・3%減額の59億4500万円。都市計画税は、固定資産税の微減を見込んで、同400万円0・5%減額の8億5900万円。市たばこ税は、消費本数の減少を見込んで、同1600万円2・4%減額の6億5700万円と試算した。
特定の目的のために積み立てた基金を取り崩して一般会計に充てる繰入金は、同3400万円1・0%減額の35億1500万円(同5・8%)。貸付金の元利収入や預金利子などからなる諸収入は、小学校給食費の無償化と児童生徒の減少などを見込んで、同5億200万円16・2%減額の25億9900万円(同4・3%)。ふるさと納税寄付金が大半を占める寄付金は、25年度の実績を下回ると見込んで、同15億1700万円43・0%減額の20億1500万円(同3・3%)と試算した。
このうち取り崩した基金の主な内訳は、一般財源の不足分を補うための財政調整基金を17億3200万円、ふるさと納税寄付金を原資に積み立てたさかた応援基金を4億8100万円、公共施設の整備資金に充てる公共施設等整備基金を3億3100万円、公債費の償還に充てる市債管理基金を3億円、合併特例債を原資に積み立てた地域づくり基金を1億2千万円など、計18基金に上る。
この結果、26年度末の主な基金残高見込み額は、財政調整基金が25年度末見込み額から36・3%減額の25億1200万円、さかた応援基金が同12・6%減額の5億5200万円、公共施設等整備基金が同11・6%減額の17億3200万円、市債管理基金が同17・4%減額の13億8700万円、地域づくり基金は同44・5%減額の1億4700万円と見通している。
依存財源では、地方交付税を、国の地方財政対策を参考に推計して、同2億5900万円1・8%増額の149億1900万円(同24・5%)と見積もった。国庫支出金は、物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を見込んで、同9億8500万円12・1%増額の91億1800万円(同15・0%)。県支出金は、農林水産業施設災害復旧費補助金が減ると見込んで、同10億5500万円18・5%減額の46億6100万円(同7・7%)。長期の借入金に当たる市債は、地域振興に資する民間投資に充当することなどから、同5億4400万円10・4%増額の57億9400万円(同9・5%)と試算した。合併特例債は、25年度で全て使い切ったため、発行していない。
酒田市は2月27日、一昨年7月の大雨災害や物価・人件費の高騰などに加え、今後想定される大規模事業を一定程度見込んで試算した「26年度予算編成を踏まえた今後10年間の財政展望」を公表した。財政展望は、予算編成に合わせて毎年作成・公表する予定。
試算は▼市債発行上限額を5年間(23~27年度)で150億円とする「プロジェクト30―30」は無視▼想定される大規模事業は、可能な限り検討中のものは反映▼物価高騰は不透明なため無視▼各年度決算の繰越金を13億円(直近5年の最小値)と見込み、うち10億円を財政調整基金に貯金―することなどを前提条件にして作成している。
それによると、想定される大規模事業の経費は、計354・3億円に上る。
内訳は①市美術館等の文化施設改修22・3億円②山居倉庫改修53・8億円③体育施設改修10・0億円④既存小中学校の改修(4校程度)62・5億円⑤中学校体育館空調設備設置6・2億円⑥コミュニティセンター改修(4施設程度)13・2億円⑦公園施設改修4・9億円⑧道路改良16・1億円⑨松くい虫対策23・7億円⑩防災行政無線更新14・5億円⑪第四中学校区義務教育学校77・9億円⑫雨水対策負担金6・4億円⑬酒田地区広域行政組合事業への負担金42・8億円。
これを踏まえた財政展望では、歳入から歳出を差し引いた収支をゼロ(財源不足が生じない状態)とするためには、26年度から10年間の基金繰入金が34・75億円~15・31億円必要と試算している。
この結果、基金残高は25年度末の95・47億円から減り続ける。市は災害など緊急時のため、財政調整基金の残高を30億円以上確保する方針を打ち出しているが、33年度以降はこれを下回り、36年度には11・18億円まで減ると試算している。
こうした見通しに基づく今後の財政運営の方針では▼プロジェクト30―30の方針の継続▼公共施設適正化の着実な実施―を挙げる。
プロジェクト30―30の方針の継続では、長期的な視点と優先順位を踏まえた投資的事業による市債残高・公債費の制御と基金残高の制御が、公共施設適正化の着実な実施では、客観的評価に基づく複合化・統廃合の一層の加速がそれぞれ重要とした。